<教養講座> ヒストリーカフェ「向小金で暮らした縄文人」
「ヒストリーカフェ」は、飲み物を飲みながら、お菓子を食べながら、ご参加者同士でのディスカッションもはさみつつ歴史の知識を深めていただく講座です。
今回のテーマは、「向小金で暮らした縄文人」。
1万年前、この地にも縄文人が住んでいたのでしょうか…?
参考資料として、木の図書館からは流山市内の遺跡発掘調査報告書や郷土資料、縄文土器に関する本を用意しました。 流山市立博物館からは、実際に流山市内で発掘されたものをたくさん用意していただきました。
机の上には…
お菓子と…流山で発掘された、本物の縄文土器です!
1万年前にこの地に暮らした縄文人によって作られた土器が今ここに…!
こうして目の前にすると、とても迫力を感じます。
【小学生向けの部】・・・10時~11時30分
小学生向けヒストリーカフェが始まりました。
講師は、昨年のヒストリーカフェ「地図から見た松ヶ丘・向小金・名都借・前ヶ崎の今・昔」でも講師を務めていただきました、流山市立博物館の学芸員の北澤 滋さんです。
(マラソン、自然観察がご趣味だそうです。スライド左下の写真は、モグラの巣だそうです!)
まずはじめに、「縄文人はどんな暮らしをしていたのか」を、みんなで考えて、想像したことを発表してもらいました。
縄文時代は、今より気候が暖かく、流山まで(さらには群馬県までも)海があったそうです。
生活に適した海沿い・水辺から、たくさんの遺跡が発掘されました。
当時は海がそばにあったため、今は海がない流山にも貝塚が残り、そこから縄文人が何を食べていたのかなど、生活の様子を推測することが出来ます。
次は土器についてです。
縄文土器をよく観察すると、何が分かるでしょうか?
見るだけでなく、さわったり、持ってみたりします。
かたち、模様、重さ…
用意された6つの土器は、それぞれ違いがありました。
どれも流山で発掘されたものですが、作られた「年代」が違いました。
1万年も続いた縄文時代、土器の特徴は徐々に変わっていったことがわかります。
共通点は、色が下のほうが赤茶色っぽくて、上のほうが黒くなっていること。
これは、土器を使って煮炊きする際、土に埋めて使ったため、火にあたったところが黒くすすけているのです。
模様も個性が現れています。
「縄文土器」と呼ばれる元になった、縄を使って模様を付けたものだけでなく、貝の表面のギザギザした部分をつかって模様を付けたものも見つかっています。
縄文人は、どんな道具を使って何を食べていたのでしょうか?
遺跡からは、いろいろな種類の木の実や貝殻、動物・鳥・魚の骨が見つかっています。
これらの食べものを、石や骨を材料にして自分で道具をつくり、
それを使って取っていたのですね。
ドングリをすりつぶす石の道具はリバーシブル仕様!
石の上の面・下の面を上手く使い分けて、すりつぶしていたようです。
こちらは縄文土器の展開図。模様の様子がよくわかります。
縄文時代の家はどんなものだったのでしょうか?
写真の遺跡からは、真ん中に煮炊きする場所があり、
手前が玄関のようになっていることが分かります。
さらに、一度住居をたてたあと、家族が増えたためか、少し「増築(拡張)」したようです。
「縄文人は服を着ていたの?」という質問がありました。
衣服は土器のように土の中に残らないため、はっきりと確実なことは分からないようです。
ただ、発掘された土器の底に、植物を編んだ布のようなものの上に置いた形跡が見られる(=布を編む技術があった)など、縄文人が服を着ていたと考えられる証拠の断片が、遺跡から見つかるのだそうです。
博物館などではガラスケース越しに見ることがほとんどの縄文土器を、
くっつきそうなくらい近くで見たり、触ったり、持ち上げたり・・・!
とても貴重な体験が出来たのではないでしょうか。
【一般向けの部】・・・13時~14時30分
一般向けの部は、小学生向けの倍の人数、10代から80代まで幅広い年齢層の方々にお申し込みいただきました。
引き続き、講師は北澤さんです。
大人のみなさんも、本物の縄文土器を観察しながら、テーブルごとにディスカッション・発表していただきました。 事前にテレビ等で興味を持ってこられた方、実際の発掘作業に参加された方、縄文時代に詳しい方等々、それぞれに縄文時代を想像していただきました。
「土器をわざと壊したのではないか」という質問がありました。
土偶は災いよけなどの目的でわざと壊したりしたそうです。
土器もわざと壊すことがあったかもしれません。
破片の散らばり方は、分かりやすくかたまって見つかったり、同じ土器の破片が随分はなれたところで見つかったり、どうしても見つからなかったりするそうです。
(テーブルの縄文土器のパーツに書かれた小さな文字は発掘された場所を示しているとのこと。見つからなかった部分はところどころ修復されています。土器の下半分くらいが無いものもありました。)
小学生向けの部でも紹介された縄文人の家の跡。
増築(拡張)のお話をすると、
「いろんな時代の遺跡が重なったりしないのか」と質問がありました。
「あります!」
1万年続く縄文時代の遺跡の上に、その後に続くそれぞれの時代の遺跡が重なると、発掘・調査はさぞかし大変なのでしょうね。
時代ごとに海岸線が移動するので、重なり具合もそれに影響されます。
長い縄文時代、家の様子も四角や丸、柱の位置・数、貝塚の位置などなど変化していきます。
前ヶ崎九反歩遺跡は、マンション建設に伴う調査で発掘された遺跡です。
この講座のチラシに掲載している縄文土器も、ここで発掘されたものだそうです。
実際発掘作業に参加された方が、貴重な写真をもってきてくださいました。
現在そのマンションに住んでいらっしゃる方が参加されており、感慨深げなご様子でした。
ここ以外にも、○○の横の森で~等々、身近な地名が飛び出し、1万年前の縄文時代がとても身近なものに感じられました。
土器以外の発掘資料を囲んで、解説を聞きます。
発掘されたものからは、思いのほか豊かな食生活を送っていたのでは、
ということがわかります。
ウナギやフグも食べていたのだとか!
しかもウナギは結構な量を食べられていたと考えられるそうです。
今まさに少なくなってしまっているウナギの話には、「おぉ~!」と言う声があがりました。
道具を大事に使っていたこと(割れた土器の破片を簡単に捨ててしまうのではなく、漁の網を投げる重しにするなど再利用していた)、
植物を使って、しっかりとしたカゴやポシェットを作る技術があったこと、
このあたりでは採れないはずの「黒曜石」が発掘されていると言うことは、「黒曜石」が採れる地域の縄文人と交流や取引きがあったのではないかということ
等々、縄文人にますます興味がわいてくるお話が聞けました。
遠い昔とはいえ、私たちと同じ土地に暮らしていた縄文人・縄文時代の生活がぐっと身近に、
魅力的にも感じられた1時間半でした。
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当日は台風の予報が出ており講座を開催できるか心配な状況でしたが、午前・午後とも雨が降ることも無く無事終了できました。 ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
また、アンケートにもご協力いただき、ありがとうございます。
小学生向けの部・一般向けの部ともに「参加してよかった」「満足」というご回答を
一番多くいただけました。
「もっと知りたくなった」という感想を書いてくださった方は、
ぜひ博物館・図書館をフル活用して、さらに知識を深めてください。
その他様々なご意見・ご感想を今後のイベント企画・図書館運営に反映していきたいと思います。